マタニティ・ハラスメントの闇
マタニティ・ハラスメントの闇
社長大集結!花見の席での話題
春も盛りのある日、顧問会社の社長たちと花見を行った。
松江「いやあ、よく咲いたけど、ちょっと寒いですね。」
A社長「寒いのは承知の上ですよ。それより、先生と皆さんと今年もこうやって、花見ができることが嬉しいですよ。今年も生き残ったなぁ、なんてね。」
松江「A社長のとこも労働審判で苦労したけど、あれからずいぶん近代化できましたものね。」
B社長「先生、私も先妻と離婚のときは会社の株を巡ってお世話になりましたが、おかげで先日先生に紹介した彼女と今度結婚ですよ。結婚式、絶対来て下さいね。」
松江「もちろんですよ。楽しみにしています。」
「先生、先日の息子の結婚式ではありがとうございました。」
松江「いい式でしたね、お嫁さん美人でびっくりしちゃった。建築トラブルのとき、息子さんの探してくれたメールの束で救われたことが懐かしいですよ。」
T社長「本当、その節はお世話になりました。先生、実はね、花見の席で何なんですが、その息子のとこに子供ができたんですが、嫁が妊娠を理由に職場から追い出されちゃったんですよ。酷いと思いませんか?」
K社長「何ですか、それは。妊婦を大事にしない会社なんて、許せん。社員の子供は私の子も同様、もっと大事にしなくちゃ駄目だ。社長の風上にもおけんな!」
松江「K社長、相変わらず熱血ですね。でも、妊娠を理由にクビなんて、とんでもない会社ですね。先日厚生労働省の通達が出たばかりなのに・・・。」
S司法書士「それなら、私も知ってますよ、あの裁判員裁判騒動以来、結構勉強しているんですよ。」
マタニティ・ハラスメントとは?
働く女性が、妊娠出産などをきっかけに職場で精神的・肉体的にさまざまな嫌がらせや、降格・解雇などの不当な扱いを受けることをマタニティ・ハラスメントという。セクハラ、パワハラと並んで、働く女性を悩ませる3大ハラスメントと言われている。
最高裁判所は2014年10月23日、妊娠出産を機に降格された女性がこの措置を違法として雇用者側に損害賠償を求めていた事件で、降格を適法としてきた1審・2審の判断を覆し、審理を高裁に差し戻した。実質的な女性側の勝訴である。
これを受けて、2015年4月7日には、厚生労働省は「育児休業の終了などから原則1年以内に女性が不利益な取り扱いを受けた場合には、企業側で業務上必要な措置だったことを説明しない限り、原則直ちに違法とする」との通知を行った。これまで、「本人の力量不足です」と企業に居直られれば、立証の難しかった不利益取り扱いの不当性が、原則「不当」とされることで、女性側の立証がぐんと楽になったわけである。
松江「T社長、息子さんのお嫁さんにがんばって闘うように言ってください、お力になりますよ。」
R社長「そうよ、そうよ。妊娠出産なんて病気じゃないんだから、頑張って仕事するのみよ、負けちゃダメよ。女は強くなくっちゃ!」
S社長「そうですよ、うちの女房なんか、子供産んで1週間で退院して、翌週には仕事してましたよ、やっぱり女はこうでなくっちゃ。」
松江「お2人とも、残念ですが、『ブー!』です。妊娠出産をする女性を軽んじることをしていけないのはもちろんですが、母性に影響が出るような過酷な勤務や努力を強いるような発言もある意味マタニティ・ハラスメントになるんですよ。」
H社長「それなら、言っていいこと悪いこと、やっていいこと悪いこと、一覧表にして、社員に配って、壁にも貼っておくってどうでしょう。」
松江「あはは、H社長らしいけど、それは大変だわ。そこまでしたら社員もナーバスになっちゃいますしね。」
K社長「そうですよ。いくら粘り強い自分でも、そんな面倒な職場に毎日いたら心が折れちゃいますよ。だいたい、心がこもっていないルールなんかつくっても、職場の雰囲気が悪くなるだけじゃないのかな。」
松江「本当ですね。まさに心の問題です。」
A社長「先生、以前セクハラ問題のときに考えたことなんですが、結局はね、こういう問題って、他人に本当に優しい社会かどうかが問われているんじゃないんですかね。」
M社長「そうそう、私もパワハラ騒動のときに思ったんですが、こっちが社員のためと思っても、通じなかったり、自分と同じ尺度で測れないもどかしさもありましたね、新社長の息子にも、そのことだけは考えるように言ってるんです。」
松江「そうですね、お二人とも、あのときは職場の人間関係で苦労されましたものね。ただね、私考えるんですが、マタニティ・ハラスメントって、実は単なる人間関係にとどまらず、深刻な問題をはらんでいるんです。妊娠出産を苦々しく思う考え方は、人間を単なる労働能力としての合理性だけで判断している考え方の行き着いた結果なんですね。『普通の人より労働能力が劣る』という点だけで見てしまう。しかし、女性がほんの数十年、子供を産むことを拒否したら、その民族は死滅するんですよ。2014年の5月に日本創成会議が発表した消滅可能性都市のこと、覚えていますか。若い女性が減少する都市はあっという間に死滅するんですよ。日本民族も、このようなマタニティ・ハラスメントが横行してきているのは、民族として終焉に向かっているっていうことですよね。」
民族の終焉を防ぐ企業の責任
悲しいことであるが、マタニティ・ハラスメントは、今や職場だけでなく、広く社会で蔓延している。私たち企業人にできることは、1人でも多くの女性が安心して働き、十分にその能力を発揮できる職場づくりしかない。そして、そういう女性に優しい職場づくりも、ごひいきにしてくれるお客さまたちあってのことである。私たちは子供の笑顔を見るたびにこの感謝の気持ちを思い出さねばならない。
参加していただいた皆さんからさまざまな声が上がった。
「あー、いい花見でした。」
「来年もやりましょ。」
「いや、もう1件行きましょ。」
「今度は、子連れ、孫連れで来ましょうよ。」
「それはいい、来年の桜が楽しみですね。」
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