知っておきたい!契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)の実際
知っておきたい!契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)の実際
建築した建物に、施主から「雨漏りがある」と言われて、折衝をしてきたが、原因がはっきりせず、直し方も同意が得られず進まない。そうこうしている内に「ほかの業者に頼むからもういい」と言われて、今度は法外な修理代や、その間の、宿泊費などの諸費まで請求されてしまった。どう対応したらいいのだろうか。
典型的な「瑕疵担保責任」の問題ですが、民法改正により、これらは「契約不適合責任」として統一されました。それにより、従来議論のあった、法的効果も整理されました。そこでは、何よりも「修補」が優先され、損害賠償は補完となっていきます。
「使えるなら、直して使おう」すなわち、もったいないの精神ですね。しかし、施主と大げんかになっている時に、そんなこと、現実的にできるのでしょうか?という疑問もわきます。
ここではまず責任の本質を見据えて、具体的な進め方もご説明したいと思います。
目次
契約不適合責任の法的本質
もともと、家屋などの特定物売買においては、契約で特定された「その家屋」を引き渡せばすむわけですから、そこに瑕疵(キズ)があろうと、「その家屋」を引き渡したことに変わりは無く、責任はないという法理がありました(特定物ドグマ)。しかし、誰だって、住まいとして家を買うわけですから、引き渡された家が雨漏りをしたり、構造に問題があったりしていて、居住に堪えないのであれば、この責任を問えないのはいかにも不合理です。
そこで、特別に法が定めた責任が瑕疵担保責任と言われていました(法定責任説)。もちろん、改正前の時代でも法的な特別な責任ではなく、契約内容から考えれば当たり前のことなんだから、契約上の責任として債務不履行になるだけでしょう、という説も根強くありました(契約責任説)。
これらの議論に終止符をうち、今回の改正で、民法上瑕疵担保責任は、契約責任であると明確に規定され、さらに、瑕疵という100年以上も前のあまり耳慣れない言葉を廃止し、契約不適合責任と規定されたのです。
この改正により、特定物・不特定物を問わず、契約で合意した内容が伴っていないのであれば、供給した方は、契約の内容にあったものを渡せるように、責任を負わないといけない、という、いわば当たり前の責任が契約の結果であると確認されたのです。
どんなものが契約不適合とされるのか
瑕疵という言葉は使わなくなりましたが、内容的には変わったわけではありません。家屋としての性能を果たすに支障となる「キズ」のことであることに変わりはありません。
また、従来の条文では明示されていた「隠れた瑕疵」という「隠れた」という部分がなくなりましたので、広く債務不履行も含まれてくることになりました。簡単に言えば、契約したときに予定したものでなければ、それは責任を問いうるということです。
- 建築基準法などの違反
- 建物が契約・予定設計と異なっている
- 外形上は予定通りだが、本来予定される性能を欠いている
・構造値を満たしていない(ホールダウン金物非設置)(耐力壁不足)
・隣地との離れ50センチが保たれていない
・4DKを作ってほしいと依頼したのに、できたのは3DKだった
・ドアを反対側につけている
・防音効果が予定と違う
・断熱効果が予定と違う
・雨漏りがする
どれも実際に裁判の場で問題となったものばかりです。もちろん、これに限らず、契約上の内容を満たしていなければ問題となるのですから、無限に増える可能性があります。
契約不適合の問題が起きたときの鉄則
本当に不適合なのかどうなのか判断をきちんとすることが前提
契約不適合責任は、契約時に合意した内容と異なっていたことに対する責任です。ですから、合意の上で変更した部分を機能性能不足と攻撃されて、クレームとされてはたまりません。そのためには、合意内容をきちんと確定できるようにしておかないといけません。
その意味で、当たり前のことですが、契約書はきちんと結ぶようにしましょう。その際、自社のオリジナル書式をきちんと作っておくことをおすすめします。
もちろん、四会連合協定のものを参照してもいいのですが、契約は千差万別なので、自社で独自のものをきちんと整備するという事が大事です。その過程で自分たちも契約書の意味をきちんと理解するよう努めることになりますので、効果は大きいものがあります。
また、契約書で引用した書面(図面も)については、必ず一緒に綴じ込むか、全体で袋とじにしておくという基本的な注意も必要です。契約書は印紙の関係があって、1枚のみしか作らず、あとは写しという事にして簡略化してしまうことも多いのですが、証明の確実さを考えると、たかだかの印紙代には代えがたいものがあります。2通作って、お互いに所持すべきものです。
原因の究明
不適合状況の現れ方はいろいろですが、契約で合意した内容を満たしていない状態が起きてしまったとわかったときに、まず一番にするべきことは原因の究明です。当然現状の把握を前提に、それがなぜ起きたのかを探り、さらにどうしたらそれは直るのかを徹底的に追求しないといけません。
責任の所在の判断
従来、瑕疵担保責任は無過失責任とされてきました。それは、法が定めた特別の責任であるという考え方によっていたものです。しかし、改正民法で契約責任であるという前提が確認されたことにより、提供側の責任で無いことがわかれば、責任はなくなります。そのため、そもそもその不適合状態が起きたのは、当事者の誰の責任なのかを議論することにメリットが出てきたのです。
施主に責任がある場合はもちろん、提供側が責任を負うことはありませんが、施主にもこちらにも誰にも責任が無い場合(不可効力など)の場合にこの差が出てくるわけです。
最悪のケース回避のためには
不適合状態が起きてしまって施主ともめ始めた場合、こちらに責任がある場合には、後述する「修補・損害賠償」などの各責任を果たさなければなりません。特に損害賠償となると、額の確定には時間も手間もかかります。これを避けるためには、「とにかく直してしまうこと」に尽きます。その意味では、契約不適合責任の一番の責任の取り方として、改正民法が「修補」と第1に据えたのは、正しい方向といえます。
特に、直す方法が見つかったのであれば、施主ともめないうちにこちらで直してしまうのがベストです。相手が高額な修繕を勝手にしてしまって、その 代金を請求してきた場合、さらに修繕費用の適正性という論点をうんでしまうからです。
さらに実際の交渉の場面でも、買い主側としても、早い時期に直されてしまった場合、いろいろいきさつで文句はあっても、まあ直ったのならいいか、と言う気持ちになってくれることも多いのです。問題が最悪の立ち上がりをすることを招かないですむメリットは大きいものがあります。
具体的な責任の取り方と解決法について
大原則である修補
旧民法では、解除と損害賠償がその中核であったのですが、今回の改正では何よりも「修補」(追完請求といいます)が認められました。不適合状態を治せるものなら直してしまいましょう、というものですから、極めて当たり前と言えば当たり前のことですが、実施の場面ではこれがなかなか難しいのです。
法は、修補の方法としては第一時的には施主(買い主)に選択権があるとしていますが、買い主に不相当な負担を要求するもので無いときは、売主においても、買い主が選択したものとは異なる方法の修補をしていくことも可能です。
代金減額請求
改正民法で新たに認められたものです。買い主は売り主に一定期間の催告をして、瑕疵の修補を要求し、それが受入れられなかった場合には,代金の減額請求を行うことができます。
解除
旧民法では契約の目的が達せられない事態になったときのみ認められていましたが、上記の通り法的には契約責任であり、債務不履行の一種であるとされましたので、債務不履行の原則に則り、催告しても履行がなされなければ,解除が可能となりました。但し、軽微な不履行の場合は解除が否定されます。
損害賠償
これも、債務不履行の一般原則にのっとり、請求できることになります。額の確定には面倒な道のりがありますから、まずはここまで来てしまわないように、「とにかく直せるものは直す」という姿勢が大切だと思います。
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