建築工事の遅延をめぐる問題の解決法
建築工事の遅延をめぐる問題の解決法
建築工事は、工期が定められています。これは契約書に絶対記載しておかなければならない絶対要素の一つです。しかし、人間のやることである以上、様々な理由から、どうしても工期が守れず遅れてしまうことはあります。
「遅れた・壊れた」が、建築工事における二大トラブル発生要因ともいわれるように、実は工事の遅延はかなり頻繁に起こっているのです。
問題は、それをトラブルの引き金にしないように対応を取ることです。
最悪の事態を招かないトラブルからの脱出法を考えてみましょう。
目次
建築工事における工期の重要性
請負契約では、契約書に絶対記載しておかなければならない14項目が定められていますが、工期はその一つです。
冒頭にも書きましたが、「壊れた・遅れた」が、建築の二大トラブル要因といわれているのですから、当事者にとって、契約上最も大切な要素の一つであるわけです。もちろん、代金もトラブル発生要因としては大きいのですが、そもそも代金トラブルが発生する原因そのものが、遅延と瑕疵(改正民法では契約不適合)であることに変わりは無いのです。
工期の遅延が起きる典型的な場合
まず人間のすることですから、遅延は起きます。また、どんなに注意しても天変地異などのトラブルは避けきれるものではありません。人と人のコミュニケーションの行き違いでも遅延は起こりえます。
以下、どんな場合があるかをみてみましょう。
- 契約はしたが、注文者の要望がコロコロ変わり、工事を始めたくても着工すらできないような場合。
- 工事には入ったが、今度は追加変更が目白押しで、いつまで経っても工事が終わらなくなってしまう場合。
- 契約後、こちらで予定していた職人の当てが外れて、着工が遅れるような場合。昨今の人手不足の実情から考えると、割と多いのがこのパターンと言えます。
- 異常気象などのため、一旦現場を封鎖したところ、今度は人工の予定が立たず、工事を再開できなくなってしまったような場合。このところの台風や大雨を考えると人ごとではすみません。
具体的な対応策1(工事業者側に問題がある場合)
職人不足
最近のような、天変地異が引き金になる事もあれば、はなから見込みが甘い場合もあります。ひどい場合は地鎮祭だけ終えて、そこから着工もせず、半年もほったらかしたという事案もあったくらいです。
【対策上必須なこと】
- まず見込みをきちんと立てること
- 説明をきちんとする(インフォームドコンセント)
人手が足りないなら、どれほど足りないのか、何時補えるのか、それで、どこまで挽回できるのか
明らかにできた原因、今後の挽回の見込みをきちんと正確に伝える。注文者が一番知りたいのはこれからどうなるのだろう、一体いつできるのかいうことです。この情報の共有が大切なのです。
その上で、工事を進めるであれば、施主との間で、どこまで責任を免除してくれるのかをきちんと合意することも必要です。
上述の今後の挽回の見込み如何によっては、譲れない線が施主に出てくるはずです(居住の必要性、店舗営業の開始など)。これを煮詰めていく時に嘘をつかないということも当たり前ですが重要です。
工事の瑕疵(改正民法における契約不適合状態)
契約で合意したものができていない場合で、このままでは契約との不適合状態を払拭できない場合、「どうやったら早く引き渡しができるのか」という問題です。
まず被害はどの程度なのか、原因はどこにあるのか、どの程度の傷なのか、原因はどこにあるのか、不適合状態を解消できる方法はあるのか、それには時間や費用はどのくらいかかるのかといった正確な分析が必要となります。
情報が明らかになったら、あとは上記と同様の対応となります。
損害額の問題
最終的に工事遅延の責任で恐ろしいのはここです。四会連合などの典型契約書では、一応の損害額の割り出し方を決めていますが、これは一つの目安に過ぎません。実際にはこれを超えて損害が発生した場合には、立証ができれば別途請求することはもちろん可能です。
まず、住居ができあがり遅延した場合などは仮住まいの賃料が被害額となってきます。
また、営業用の物件だったような場合には、仕事ができないという損害がストレートに発生します。さらに、この中には、固定経費以外に、新しく店舗が営業できていればこんなに稼げたはずだといういわゆる「得べかりし利益」の議論が必ず入ってきます。これらはなかなか立証が難しいことが多く、逆に施主側においては恨みだけが増大していき、解決が困難になる場合もあります
単純な言い方ではありますが、遅れを最小限にすることしか被害の拡大を防ぐ方法がないのです。
具体的な対応策2(施主側に問題がある場合)
施主側の問題と言っても、本当は正確に言いますと、それを許してしまった工事業者側の営業態度に問題があるともいえます。こういった事態の発生を許さない業務姿勢が問われる局面です。
例えば、施主のわがままで、工事内容の変更・追加をあいついで行ったために工期に影響が出る場合には、必ず遅れることに免責の同意を得ておくことが必要です。
またかかる費用についても、影響が出るようであれば、もれなく記載しておき、同意を得ておくことが大切です。
特に、些細な変更だと思ったので、口頭で合意して発注したところ、思わず在庫がなく、部材の入手に手間取り、工期が遅れた場合などは、その箇所によっては、それを前提とした次の工事ができなくなり、どんどん工期が遅れる可能性があります。これを工期の延期など合意していないと言われて全責任を請求されたらたまりません。
部材の品番変更については、再見積を必ずとり、値段の変更がある場合には,必ず合意の署名押印をもらうことが大切です。工事内容の変更がある場合ももちろん同様です。
さらに、これらの変更によって工期が遅れる場合には、免責の合意を書面で得ておくことが必須です。書面にするのは、「言った・言わない」の不毛な議論を避けるためです。
詳細な打ち合わせ内容は、かならず議事録を作り、さらに議事録を添付したメールを発送しておく(当然控えはとっておく)。少なくともその内容のやりとりがあったことを証拠に残すようにしましょう。できれば、詳細部分に付いては、メールでのやりとりをしておくのが望ましいといえます。
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