パワハラの定義とは?
新入社員を迎えるにあたって気を付けるべき点
パワハラの定義とは?
新入社員を迎えるにあたって気を付けるべき点
パワハラに関して、他人事もしくは対岸の火事くらいに思っていませんか?
社内環境をよくするためには、まず人間関係の構築が必須で、相手を一人の人間として尊重し、相手の立場や気持ちに立って考え、行動することが必要だと考えられます。
新入社員を迎える会社は、新しいメンバーとよりよい人間関係を構築し、さらなる会社の発展を目指していくためにぜひご確認ください。
目次
はじめに
会社の業務が増え、規模が大きくなると、新しく新入社員を募集し、迎えることもあると思います。新入社員を迎えるにあたり気を付けることはいろいろありますが、その中でも特に気を付けるべきポイントの一つとして、「パワハラの防止」があります。
「パワハラ」すなわち「パワーハラスメント」という言葉はすでに我々にとって身近なものになっていますが、パワハラによって会社が損害賠償請求等の法的責任を追及されたり、パワハラの事実が広まって会社の社会的評価が低下してしまう事例が多々あります。
パワハラの防止は、もちろん今いる会社の従業員においても重要なことですが、会社と新入社員のように、まだお互いのことをよく知らず、これから信頼関係を構築していこうという関係においては、特に気を付けていく必要があります。
今回はそうしたパワハラの防止について2022年4月から中小企業にも適用される「パワハラ防止法」の話をしていきたいと思います。
パワハラとは
パワハラの定義
まず「パワハラ」とは、どのような行為を指すのかを、その定義を最初に押さえておく必要があります。これについては、厚労省は以下のように定義しています。
- 職場において行われる
- 優越的な関係を背景とした言動であって
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
- 労働者の就業環境が害されるものであること
この定義は「厚生労働省告示第五号「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」という、かなり長い名称の指針(いわゆる「パワハラ指針」)で規定されたものです。
パワハラ定義の詳細説明
ただ、これだけだと抽象的でピンとこない部分もあると思いますので、もう少し詳しく説明すると、以下のようになります。
1.「職場」とは
これは、労働者が通常就業している場所のみならず、以下のような場所でも、それが業務を遂行する上で関連する場所であれば「職場」に含まれる場合があります。例えば以下のような場所も該当します。
・出張先
・勤務時間外の懇親会
・社員寮や通勤中等
2.「優越的な関係を背景とした言動」とは
これは、業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が行為者とされる者(以下「行為者」という。)に対して抵抗や拒絶することが困難な関係を背景として行われるものを指します。
典型的なのは「職務上の地位が上位の者による言動」ですが、「同僚又は部下による言動」であっても、以下のような場合等は、これにあたると判断される可能性があります。
・同僚又は部下が特別な技能や知識を持っており、それが無ければ業務を遂行できないことを背景にして発する言動
・同僚又は部下が会社内において特殊な人的要素(※社長の娘婿等)を持っており、それを背景にして発する言動
3.「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」とは
これは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないものを指します。
・業務上明らかに必要性のない言動
・業務の目的を大きく逸脱した言動
・業務を遂行するための手段として不適当な言動
・上記以外で、当該行為の回数、行為者の数やその態様、手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
4.「労働者の就業環境が害される」とは
これは、当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当とされています。
・心身に不調をきたした場合
・心理的に業務の遂行が困難になった場合等
パワハラはこれらに限られない
以上がパワハラの定義とそれの詳しい説明ですが、これはあくまで厚労省の「指針」上の定義や説明に過ぎず、これで全てを網羅しているわけではありません。
したがって、これに該当しないからといって「パワハラでないから大丈夫」ということにはなりませんので、ご注意が必要です。
中小企業にも施行される「パワハラ防止法」と、パワハラ防止のための措置
パワハラ防止法の施行
上記のパワハラ指針は、「パワハラ防止法」という法律の制定に伴って規定されたものですが、このパワハラ防止法とは、正式名称を「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(略称:労働施策総合推進法)といい、2019年5月の改正で以下の通りパワハラ防止のための雇用管理上の措置が義務づけられたことで、「パワハラ防止法」という通称になりました。このパワハラ防止法は、大企業では2020年6月1日から、中小企業では2022年4月1日から施行されます。
事業者の義務の明確化
そして、このパワハラ防止法では、事業者の義務として、以下のように定められています。
・雇用管理上必要な措置を講じること
その「雇用管理上必要な措置」とはいかなるものを指すのか、具体的には会社ごとに千差万別ですが、例えば以下のような内容があげられます。
・事業主によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発
・苦情などに対する相談体制の整備
・被害を受けた労働者へのケアや再発防止等
会社の体制づくり
こうした体制を細かく構築している会社はそう多くないと思いますが、これから新入社員を迎える会社に置いては、今一度、パワハラを防止するためにはどのようなことが必要で有効か、万が一パワハラが起きた場合にはどのような対処が必要かという点を改めて検討し、必要な体制を早めに構築した方が良いでしょう。
新入社員からの逆パワハラにも注意!
前項の通り、パワハラに当たる言動というのは、必ずしも上司から部下に対するものに限られず、部下や同僚の言動の場合もあり得えます。数は多くないでしょうが、新入社員によるパワハラというのも場合によっては起こりえます。
「新しく会社に入った人が上司や先輩にパワハラなんて行うのか?」と疑問に思われるかもしれませんが、例えば、以下のような状況を想定してみてください。
・中途採用で既存従業員より年上の新入社員
・特殊な技能や知識を見込まれて入社した新入社員
・社長の娘婿等の特殊なコネで入社した新入社員
上記のような新入社員が以下のような行動をとることがあります。
・年下の上司を見下した言動をとる
・自分がいないと会社の業務が回らないことを良いことに、上司に理不尽な要求をしたり上司をバカにしたりする
・社長等との特殊なコネを笠に着て上司に対して身勝手ないし高圧的に振舞う
といったような場合は、新入社員から上司・先輩に対する言動であってもパワハラに当たる可能性があります。
もちろん、これらはレアケースでしょうが、新入社員というのは会社にとってその人となりがまだよく分からない場合がほとんどで、入社してみたらとんでもないヤツだった、という場合も起こりえるのです。
そのため、「新入社員を迎えるにあたって気を付けるパワハラの防止」とは、新入社員へのパワハラの防止だけではなく、新入社員から既存従業員に対するパワハラの防止をも意味するのです。
モンスター新入社員のせいで、今いる従業員が傷つき、会社を辞めるようなことになってしまえば、それこそ不幸以外の何物でもありません。
そうした事態を未然に防ぎ、既存従業員を守っていくというのも会社の大事な責務です。
おわりに
パワハラは、冒頭で述べたように、会社と新入社員のように、まだお互いのことをよく知らず、これから信頼関係を構築していこうという関係においては、特に「お互い」がよく気を付けていくべきことだと思います。
しかもパワハラの中には、意図的ではなく、相手のために良かれと思ってやったことが結果的にパワハラとなってしまった場合も少なくありませんから、よくよく注意していかなくてはなりません。
本コラムでは、パワハラについて様々な解説を記載しましたが、一番大事なのは、やはり「相手を一人の人間として尊重し、相手の立場や気持ちに立って考え、行動すること」ではないでしょうか。
そうした人として当たり前のことを会社の中でも自然に行われていくことが何よりのパワハラ防止になると思います。
新入社員を迎える会社は、新しいメンバーとよりよい人間関係を構築し、さらなる会社の発展を目指していただければと思います。
パワハラ防止のための体制づくりにつきましては、ぜひ一度弁護士への相談をご検討ください。そして弁護士法人DREAMでは、月額11,000円でさまざまな法律に関するご質問に原則24時間以内で回答をする顧問契約「リーガルコネクト」をご提供しております。ぜひご活用ください。
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