契約書で見落としがちな重大ポイント9
見落とすと実はマズいかも? 収入印紙の話
契約書で見落としがちな重大ポイント9
見落とすと実はマズいかも? 収入印紙の話
企業では様々な契約書が作成され、締結されていますが、その中には収入印紙を貼らなければならないものがあります。
収入印紙の金額は、多くの場合、数千円か数万円程度のものであり、会社の業務で扱う金額に比べれば僅かなものですが、見落とすと重大なトラブルに巻き込まれる危険性があります。
この機会に収入印紙に関する基本的な知識を押さえてしまいましょう。
目次
1.そもそも収入印紙とは
印紙(収入印紙)とは、印紙税法という法律に基づき、課税対象に指定されている書類(課税文書)において、一定の税金を納めるために、貼り付けが義務付けられている切手サイズの証票のことです。
この収入印紙は、郵便局、コンビニ等で販売されておりますが、購入するだけでなく、課税文書に張り付け、消印をすることで初めて税金を納めたことが証明されます。
2.どのような契約書に収入印紙が必要なのか
それでは、具体的にどのような契約書に収入印紙が必要なのかを見ていきましょう。
印紙税法で定められた「課税文書」、つまり収入印紙の貼り付けが必要な文書は全部で20種類ありますが、それらの課税文書は「第○号文書」といったカテゴリーで分けられています。
例えば、金銭消費貸借契約書は「第1号文書」の一つとして位置づけられています。
以下、契約書が含まれているものを上記カテゴリーごとに記載しますので、今取り扱っている契約書、あるいはこれから締結予定の契約書が当てはまるか、確認してみて下さい。
2-1.第1号文書
第1号文書は、さらに以下の4つの類型に分けられています。
①不動産、鉱業権、無体財産権、船舶もしくは航空機または営業の譲渡に関する契約書
例:不動産売買契約書、不動産交換契約書、不動産売渡証書など
(注)無体財産権とは、特許権、実用新案権、商標権、意匠権、回路配置利用権、育成者権、商号および著作権をいいます。
②地上権または土地の賃借権の設定または譲渡に関する契約書
例:土地賃貸借契約書、土地賃料変更契約書など
③消費貸借に関する契約書
例:金銭借用証書、金銭消費貸借契約書など
④運送に関する契約書(傭船契約書を含む。)
例:運送契約書、貨物運送引受書など
(注) 運送に関する契約書には、傭船契約書を含み、乗車券、乗船券、航空券および送り状は含まれません。
2-2.第2号文書
請負に関する契約書
例:工事請負契約書、工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書、映画、俳優専属契約書、請負金額変更契約書など
(注) 請負には、職業野球の選手、映画(演劇)の俳優(監督・演出家・プロデューサー)、プロボクサー、プロレスラー、音楽家、舞踊家、テレビジョン放送の演技者(演出家、プロデューサー)が、その者としての役務の提供を約することを内容とする契約を含みます。
2-3.第3号文書
契約書として定められているものは無し
2-4.第4号文書
契約書として定められているものは無し
2-5.第5号文書
合併契約書又は吸収分割契約書若しくは新設分割計画書
(注)
1.会社法又は保険業法に規定する合併契約を証する文書に限ります。
2.会社法に規定する吸収分割契約又は新設分割計画を証する文書に限ります。
2-6.第6号文書
契約書として定められているものは無し
2-7.第7号文書
継続的取引の基本となる契約書
(注) 契約期間が3か月以内で、かつ、更新の定めのないものは除きます。(例) 売買取引基本契約書、特約店契約書、代理店契約書、業務委託契約書、銀行取引約 定書など
3.収入印紙の金額は?
肝心の収入印紙の金額は、上記のカテゴリーごとに基準が定められています。
印紙が必要となる契約書は、上記の通り、第1号文書、第2号文書、第5号文書、第7号文書の4種類でしたので、その4種類について金額を記していきます。
3-1.第1号文書の印紙税額
契約書記載の契約金額により、以下の通りとなります。
・10万円以下のもの:200円
・50万円を超え100万円以下の:1,000円
・100万円を超え500万円以下のもの:2,000円
・500万円を超え1,000万円以下のもの:1万円
・1,000万円を超え5,000万円以下のもの:2万円
・5,000万円を超え1億円以下のもの:6万円
・1億円を超え5億円以下のもの:10万円
・5億円を超え10億円以下のもの:20万円
・10億円を超え50億円以下のもの:40万円
・50億円を超えるもの:60万円
・※契約金額の記載がないもの:200円
3-2.第2号文書の印紙税額
これも契約書の金額に応じて金額が定められています。
・100万円以下のもの:200円
・100万円を超え200万円以下のもの:400円
・200万円を超え300万円以下の:1,000円
・300万円を超え500万円以下のもの:2,000円
・500万円を超え1,000万円以下のもの:1万円
・1,000万円を超え5,000万円以下のもの:2万円
・5,000万円を超え1億円以下のもの:6万円
・1億円を超え5億円以下のもの:10万円
・5億円を越え10億円以下のもの:20万円
・10億円を越え50億円以下のもの:40万円
・50億円を超えるもの:60万円
・※契約金額の記載がないもの:200円
引用:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
3-3.第5号文書、第7号文書の印紙税額
これは、契約書記載の金額に関わらず、一律で4万円です。
4.収入印紙は誰が負担するのか
収入印紙の代金は、原則として契約書を作成した者が負担することになっています。
しかし、多くの場合、契約者の人数に応じた部数を作成して各自が保管する、例えば2者間の契約の契約書であれば、2通作成して双方が1通ずつ保管することになっていますが、こうした場合は、2通とも収入印紙が必要なので、双方が1通ずつの印紙代を負担することが一般的です。
このあたりのことは、トラブル防止のため、契約書作成の交渉段階であらかじめ話し合っておくことが必要です。
5.印紙を貼らなかった場合はどうなる?
この場合は、大げさなようですが、「脱税」とみなされてしまいます。
課税文書に印紙が貼付されていない旨を税務署などに指摘された場合、本来納付すべき印紙税に加えて、印紙税の2倍の過怠税を払うことになるので、結局、通常の3倍の税額が課せられることになります。
また、契約書の作成や締結を自分たちが主導して行った場合、こうした税金上のトラブルを生じさせたことによって、取引先・契約相手との信頼関係に悪影響を及ぼし、さらなる二次的なトラブルが生じたり、会社の信用を低下させたりする可能性もあります。
※ただ、契約書としての効力は否定されません
くれぐれも貼り忘れのないようにしましょう。
6.ペーパーレスで収入印紙が不要に!
以上のように、収入印紙は意外と面倒なものですが、実は契約書をペーパーレスで締結することで収入印紙が不要になります。
具体的には、メールに契約書のPDFファイルを添付したり、FAXで送受信したり、あるいは電子契約の形で締結する場合です。
国税庁の見解によると、文書の作成が課税の根拠となっているところ、メールやFAX、電子契約での取り交わしは「文書を作成したこと」にならないため、印紙税は非課税となるのです。
逆に言えば、通常通り契約書を作成、つまり当事者の署名押印を入れたものを紙ベースで作成してしまった場合は、その後いくらFAXで送ったり、PDFファイルにしたりしたとしても、文書を作成したことになり、課税されてしまいますので注意が必要です。
現在は、会社のペーパーレス化が進んでいる状況ですので、こうした方法で契約書を締結することも積極的に活用しても良いと思います。
7.おわりに
いかがでしたでしょうか。
収入印紙は、契約締結の場面ではそれほど重要視はされないものですし、上記の通りペーパーレスで締結すればそもそも不要になるものではありますが、備えあれば憂いなし。こうした細かいことにも注意を払い、余計なトラブルが生じないようにしていくことも大事です。
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