構造上の欠陥があるとして、損害賠償請求訴訟を提訴された事例

構造上の欠陥があるとして、損害賠償請求訴訟を提訴された事例

建築施工の問題による損害賠償請求訴訟を提訴された事例をご紹介させていただきます。

事案の概要

【訴訟】 当方被告 建築集中部係属

当方にて建築施工した平成14年築造の、1階RC2階3階木造の一戸建て注文住宅。建築直後から、雨漏り等の被害が相次ぎ、修理を繰り返すが改善せず、平成16年、相手方の指定する建築士の指示に従い、1000万円かけて補修工事を行った。

しかしその後も、修理箇所ではない原発性の雨漏りが発生して対処したりを繰り返し、施主との関係がだんだんと悪化していく。結局、その後もカビ臭が消えない事について、結露だ、いや雨漏りだと争いが収束せず、相手方から、平成22年、雨漏りの修補に加えて、構造上の欠陥がある(構造計算違反など)を理由として、4000万円あまりの修補のための損害賠償請求訴訟を提訴された事案。

結果

当初、雨漏りについては、ポタポタと落ちてくるような雨漏りでは無く、壁の内部に水がしみた後がある、かび臭い、というようなレベルであり、被害については猜疑的な見方を裁判所もしていた。ただ、構造値の問題については、審理が進むにつれ、基礎部分の施行に欠陥があったことが明らかになり、どう補修を進めるかについて、東京地裁建築集中部の4人の専門委員の先生の指導を仰ぎ、現場での立ち会い検査を行った上で補修箇所を特定した。この時、雨漏りについても、結露とだけもいいきれないような水の流れがあるとの指摘を受け、この補修も含ませることとならざるを得なかった。

その上で、補修金額について妥当な価格の割り出しを双方で行い、何回か審理を繰り返した後、和解勧告を受ける。 和解の内容は多岐にわたるが、修理費用だけについて言えば、相手方の請求額6000万円余りに対して,当方の提示額1000万円あまりという論戦となったが、結果的に裁判所の和解勧告は2000万円であり、比率から言えば勝訴和解となった。もちろん、これに建築士の設計監理費用や、いったん転居せざるを得ない費用などが加わったが、おおむね納得できる範囲として、双方和解案を受諾して、和解が成立した。

解決期間

約15ヶ月

解決のポイント1

補修費用は双方が見積もりを計算したが、払う方は低めに、もらう方は高めに出すのは当然のことである。大切なのは、誰が見ても、高額と思える部分をどれだけ説得的に裁判所に理解してもらうかの資料の提出と、わかりやすい数値化の工夫であった。たとえば、原告側から出された見積もりには、それぞれの補修箇所をばらばらに行った場合の補修単価が合算されていたところを、一緒にできる工事は一緒に行うことで、足場かけを一回に絞ったり、隣接する壁の必要箇所を一度にはがして複数の補修工事を一度に行うなどの工夫をすることで、工程は圧倒的に短縮できることなどをできるだけわかりやすく、裁判所に理解してもらえるように工夫した。

解決のポイント2

建築基準法の改正は日進月歩であり、建築工事の時点より、当然ながら基準値は厳しくなっている。そのため、その数値を満たすような補修工事となると、当然高額になるが、当方としては、補修の基準時はあくまで、建築時であるから、そのすべてを負担せねばならないものではないと主張。たとえばキッチン周りの防火材の使用の制限なども、建築時と現在では基準が異なっている。新しい基準に沿うように補修するのは勝手だが、それら全部が必要な補修費となるわけではないことを指摘して圧縮に努めた。

弁護士からのアドバイス

建築の瑕疵の問題は非常に深刻であり、案件も多いことから、東京地裁では建築集中部(民事第22部)において、多くの専門委員を擁して慎重な審理が行われている。

しかし、専門委員は今日、総じて心情的にはユーザー寄りであるので、よっぽど合意的な補修箇所の絞り込みや価格の適正性を力一杯主張しないと、厳しい結果となる。また、建築瑕疵による慰謝料についても最近は認められるケースが増えてきている。おおざっぱに言えば、過失による建築瑕疵については否定される傾向が強いが、意図的な手抜き工事であることが判明すると、程度の如何によっては、100万円前後の慰謝料が付加されることも散見している。要注意である。

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