離婚時に親権を獲得するために知っておくべき10のこと

離婚時に親権を獲得するために知っておくべき10のこと

夫婦の間に子供がいる場合、離婚の際に必ず問題になるのが親権です。
「親権は絶対に相手に渡したくない」「財産はいらないから子どもだけ欲しい」という方も少なくないでしょう。

離婚の際に、親権が争われ、話し合いがまとまらないことも珍しくありません。
では、この親権とはそもそもどういうものなのでしょうか。そして、親権者はどのように決められるのでしょうか。

親権を獲得したいと考えている方のために、知っておくべき知識をまとめました。

目次

親権とは

親権とは、未成年の子供を養育・監護し、子供の財産を管理し、代理人として法律行為をする権利や義務のことをいいます。法律上は、「財産管理権」と「監護権(身上管理権)」とに分けられています。

1.「財産管理権」について

財産管理権とは、

  • 包括的な財産の管理権
  • 子どもの法律行為に対する同意権(民法5条)

のことを言います。

子ども(未成年者)の契約を親権者は代理人として行うことができ、子どもが単独でした契約を、親権者は取り消すこともできます。
子どもの財産を、どのように子どものために使うかについて、親権者には広い裁量権があります。

もっとも、子どもの財産であって親権者の財産ではないので、親権者は子どものために適正にその財産管理をしなくてはなりません。

2.「監護権(身上監護権)」について

監護権には、以下のようなものが挙げられます。

  • 身分行為の代理権
    子どもが身分法上の行為を行うにあたっての親の同意・代理権のこと。例えば結婚や養子縁組など。
  • 居所指定権
    子どもの住む場所、居場所を指定する権利
  • 懲戒権
    子どもに対して懲戒・しつけをする権利
  • 職業許可権
    子どもが職業を営むにあたってその職業を許可する権利

などがあります。

監護権は、簡単にいうと、子どもと一緒に生活して子どもの世話や教育をする権利のことで、親権の一部ですから、親権者がこれを行使します。

しかし、「財産管理は父親がすべきであるが、子どもの世話は母親がする方が良い」といった場合や、「親権者である母親が海外転勤になって子どもの世話ができないので、父親を監護権者とした方が子どもの養育環境にふさわしい」といった場合などに、例外的に、監護権者が親権者と別に定められることもあります。

3.まとめ

親権は、「財産管理権」と「監護権」という親の権利ではありますが、実質は、自分の子どもを健全な大人に育てる親の義務という意味が強くあります。
そのために必要な権利を定めたものが親権の本質と言えるでしょう。

離婚していない夫婦の場合は、共同で親権を行使しますが、離婚をすればそういうわけにもいかないので、片方を親権者として決めることになります。

親権者を決めずに離婚はできない

未成年の子供がいる夫婦が離婚する場合には、どちらが親権者になるかを決めなければいけません。
離婚届には親権者を記載する欄が設けられており、親権者を記載しなければ、役所も離婚届を受理してくれません。
したがって、親権者を決めずに離婚することはできない、ということになります。

親権者はどのように決められるか

では、親権者は実際にどのように決められるのでしょうか。
具体的に見ていきます。

協議離婚の場合

協議離婚の場合は、夫婦の話し合いによりどちらが親権者になるかを決めます。

話し合いで決められない場合

離婚に合意はしていても、親権はお互いが譲らず、当事者同士の話し合いで決められない場合もあります。
そのような場合には家庭裁判所の調停で決めることになります。
調停でも折り合いがつかなければ、審判手続に移行し、最終的には裁判所の判断により親権者が指定されることになります。

調停や裁判では、どのような基準で親権者を決めるのか

では、話し合いで決められない場合に、裁判所はどのような基準で、どちらが親権者にふさわしいと決めるのでしょうか。

1.親権者を決めるために考慮される事情

親権は、親の権利である一方、社会的に未熟な子どもを保護して、子どもの精神的・肉体的な成長を図っていかなければならない親の義務でもあります。
そのため、親権者の指定は「子どもの成長のためには、どちらを親権者にした方がいいか」という観点から、子供の利益を中心として考えられることになります。
要は、「子どもの幸せ」という観点から親権は決められることになります。

具体的には、以下のような事情が考慮されます。

  • 現在の養育状況
    子どもが過度に環境の変化にさらされることは好ましくないため、事実上、いま現在、子どもと同居しているかどうかという状況が重視される傾向にあります。
  • これまでの養育状況
    これまで子育てにどのように関わってきたのかという、過去の養育実績も考慮されます。
  • 離婚後の子どもの養育環境
    住宅や学校など、子どもに適切な生活環境が与えられるか、また、自身が子育てに十分な時間を充てることができるか、などが考慮されます。
    また、病気になった場合など、子育てに協力してくれる親族がいるか、なども検討材料となります。
  • 子どもとの信頼関係
    10歳前後から、どちらと住みたいかという子どもの意思も重視されます。
  • 収入などの経済力
    子どもにきちんとした生活をさせるには、経済力も必要になってきます。
    もっとも、収入については、相手から養育費をもらうことができるので、収入がない(少ない)と親権者になれないということではありません。
  • 親の年齢や、心身の健康状態
    親自身に十分に子育てを行う体力があるか、心身ともに健康かということも、親権者を決める上で重要な要素になります。
  • 環境の変化が子どもに与える影響
    離婚後も子どもが住んできた環境を維持できるか、あるいは、環境が変わる場合には子供にとってその方が良いと言えるか、子どもの心身に大きな負担とならないか、なども考慮されます。

以上のように、親権者の指定は、様々な事情を考慮して総合的に判断されます。

2.家庭裁判所調査官による調査

離婚調停の中で、どちらが親権者にふさわしいのか、家庭裁判所の調査官により調査が行われることがあります。

調査官は、子どもの学校を訪問して、子どもの身なりや学校での様子、成績、性格、健康状態などを観察したり、家庭訪問によって、同様に子どもの状況を調査します。そして、調査の結果を裁判所に提出します。

調査官も人間ですから、完璧ではないと思われますが、心理学や社会学のプロである調査官の調査結果は裁判所でも尊重されるのが一般的です。

調査官調査が行われることになった場合には、礼儀正しく協力し、家庭訪問の際には自宅を掃除しておくなど、社会人として(親として)しかるべき振る舞いをすることを心がけましょう。

親権を獲得するためにすべきこと

親権を絶対に獲得できる、という保証はどこにもありません。
一方が親権者になれば、もう一方は親権者ではなくなりますから、100%ということはあり得ないのです。
もっとも、親権の獲得に少しでも近づくために、すべきこと、注意すべきことはあります。親権者になりたいという場合には、ぜひ参考にしていただければと思います。

1.自分が親権者にふさわしいという実態をつくる

裁判所は「子どもの幸せのためにはどちらが親権者にふさわしいか」という観点から親権者を指定します。

つまり、親権を獲得したいのであれば、「自分の方が親権者にふさわしい」という事情を裁判所に対して堂々と伝えられるように準備しなくてはなりません。

心身ともに健康で、子どもと信頼関係があり、離婚後も子どもに適切な養育環境を準備することができる、ということを具体的に説明でき、それが現実的なものである必要があります。
また、将来に向けた視点に加え、これまでにも(過去にも)自分が親として、子どもの幸せをどのように考え、何をしてきたかということも整理しておくとなお良いでしょう。

一方、子どもに暴力を振るったなど、子どもを不幸にするような問題行動があった場合には、その原因と対策をきちんと説明できるようにしておくべきです。

そして、同居の事実が親権者を決める上で非常に重要な要素であると指摘したとおり、夫(妻)と別居をする場合にも、子どもとは離れないことです。
子どもと現実に一緒に生活をしているということが、親権を獲得する上で有利な事情となるからです。

2.調停の場で、きちんと伝える

いくら自分の方が親権者にふさわしいと思っていても、それが調停の場で、調停委員や裁判官に伝わらなければ意味がありません。

したがって、前項で解説した事情を整理して、しっかりと自分で説明できるようにしておかなくてはなりません。

3.子どもを利用したり、相手との面会を拒絶したりしない

相手が浮気をして離婚になったような場合には、相手に対する憎しみもあり、子どもに対して、相手が悪者であるといった印象を植え付けてしまうケースがあります。
しかし、子どもは、父親も母親も大切であり、両方に愛されたいと思っています。

したがって、子どもに、父親(母親)の悪印象を植え付けて、「パパ(ママ)は嫌い。ママ(パパ)大好き。」と自分の味方に誘導するようなことは、子どもの健全な成長を阻害し、裁判所にも良い印象は与えないのでやめましょう。
ほとんどのケースでは、子どもも、親に遠慮してそのような発言をしているに過ぎません。

また、相手に会わせたくないという気持ちから、面会交流を拒絶するような態度も好ましくありません。
面会交流は、子どもが両親から愛されていると自覚でき、子どもの健全な育成にとって価値があると考えられています。したがって、暴力や薬物依存など、特殊な事情がない限り、子どもが相手と面会交流することを妨げるような行為は、裁判所にも良い印象は与えません。

つまり、子どもの幸せや健全な育成を第一に考え、親権者としてふさわしい行動をとる、ということが大切なのです。

不倫・浮気をした側でも親権者になれる

浮気が離婚の原因であるような場合に、浮気をした側でも親権者になることは可能です。

浮気をされたほうは、相手が親権者にふさわしくないと主張するかも知れませんが、離婚の原因と子どもの親権は分けて考えられることになっています。

子どもの世話を放棄して、愛人のもとへ去っていった・・・というような場合には、そもそも親としての行動に問題がありますから、不倫の事実は親権者を決める上で不利な事情になるかも知れません。
しかし、親権者の指定は、あくまで、子どもの養育環境にとってどちらが親権者になるのが良いかという観点から決定されることになっています。

したがって、自分が浮気をした側で、離婚になったのは自分の責任だという場合でも、親権を諦める必要はありません。

収入が少なくても、専業主婦でも、親権者になれる

親権は、親の権利である一方、そもそも、社会的に未熟な子どもを保護して、子どもの成長を図っていくための親の義務でもあります。したがって、親権は、子どもを十分に養育することができ、子どもの成長にふさわしい環境を提供できる方に指定されるべきと言えます。
とはいえ、親権者として経済的にある程度の基礎がないといけませんが、収入の多い少ないで親権者になれるかどうかが決まるわけではありません。

それを補うために養育費という制度があり、仮に収入が少なくても、実際に子どもを引きとって養育監護することはできると考えられるからです。

すでに説明しているとおり、子どもの環境の変化という観点から、今現在、子どもと暮らしている、という状況が尊重される傾向があります。
したがって、収入が少ない女性でも、子どもと一緒に暮らし、実際に養育監護していれば、親権を堂々と主張して良いのです。

養育費に関して、詳しい解説をご覧になりたい方はこちらの記事を参照ください。

子どもが相手に連れ去られた時にとるべき行動

子どもを連れて、夫(妻)とは別々に暮らし始めたという場合でも、突然、子どもを相手に連れ去られるということが時々起こっています。

連れ去りという行為自体が認められてしまうなら、子の奪い合いを認めるも同然ですから、子の連れ去り行為は、親権者を決める上では不利に働く事情です。

しかしながら、すでに述べたとおり、実際に、一緒に暮らして養育監護しているという実態が親権者を決める上で有利に働くため、連れ去られた後、相手の元に子どもがいるという状況を放置しておくことは好ましくありません。

きっかけが連れ去りであったとしても、子どもがその環境に馴染んでしまえば、再び環境を変えることの子どもへの悪影響を鑑みて、親権者が相手になってしまう、という恐れがあるのです。

したがって、万が一、子どもが相手に連れ去られてしまった場合には、早急に「子の引渡しの審判・審判前の保全処分」を裁判所に申し立てる必要があります。 自力でまた奪い返す、ということは、子どもの心的悪影響が心配されますし、事態が泥沼化しかねません。

よって、子の連れ去り事件が起きた場合には、速やかに専門家に相談をして対応を図ることが望ましいでしょう。

子どもを連れ去られてしまったときの対応に関して、詳しい解説をご覧になりたい方は下記の記事を参照ください。

【子の引渡し請求】子どもを取り返したい

いったん決めた親権者が変更されることもある

いったん決めた親権者について、その後一切変更はできないというわけではなく、事情の変化に応じて、親権者を変更することも可能です。

ただし、親権者の変更には、「親権者変更の調停・審判」を家庭裁判所に申立てて、裁判所に新たな親権者を指定してもらう手続きが必要になります。当事者の協議のみで変更することはできません。
これは、親権が単なる権利でなく、義務を伴い、一旦引き受けた以上、勝手に放棄することができないことを意味しています。

親権者変更の申立ては、両親のほか、子どもの親族でも申立てることができます。子ども自身に申立てを行う権利はありません。
なお、子どもの利益のために、特別に必要があるといった事情がない限り、親権者の変更はなかなか認められない傾向にあります。

親権を喪失することもあるので注意

仮に親権者になったとしても、その後、子どもに対して親権者の責任と義務を果たしていない場合、親権を喪失することがあります。

例えば、子どもに対する暴力や虐待、養育の放棄、行方不明、労働の強制などの行為があった場合は、一方の親や子どもの親族、検察官、児童相談所の所長などが、家庭裁判所に親権喪失の申し立てを行うことができます。

なお、親権の喪失が認められても、一方の親が手続きなしに親権者になれることはありません。一方の親が親権を喪失したことを理由に、自分が親権者となることを申立てることになります。

父親も親権者になれる

離婚の際、8〜9割のケースで母親が親権者になっていると言われています。
特に子どもが小さい時には、母親が親権者に指定され、父親が親権者になるのは難しいのが現実です。

しかしながら、父親が親権者になれないというわけではなく、「父親が親権者になる方が子どもにとって幸せである」と認められれば、父親が当然に親権者になります。
また、父親が子どもと一緒に生活し、養育監護している実態があれば、父親が親権者になる可能性は高くなります。

なお、親権者になれない場合には、面会交流の条件が有利になるように交渉するなどの戦略もあり得ます。
離婚に詳しい専門家にぜひ相談してみてください。