支援団体(第三者支援機関)のサポートを受けて面会交流を実現する方法
離婚
目次
1.面会交流で問題となるケース
面会交流は、離婚後も子どもが両親の愛情を確認できる大切な機会であり、安心かつ安全な親子の交流は、子どもの健やかな成長のために重要なものです。
その面会交流を実現するためには、父母が協力し合う必要があります。
しかし、父母が別居や離婚に至る事情から紛争状態にある場合には、面会交流の「取り決め」や「実施時」に問題が生じ、面会交流を行うことが難しい場合があります。
なお、面会交流の内容として次の事項を具体的に協議することが多いです。
- 面会交流の頻度
- 子供の受け渡し方法
- 連絡方法
- 面会交流の場所
- 面会交流の方法(直接面会、オンライン面会など)
- 行事への参加/宿泊ありの面会/プレゼントや写真の受け渡しの可否
- 子供の成長に応じて面会交流の内容変更の再協議をするかどうか
- 第三者機関・支援団体等の利用
- 交通費など面会交流にかかる費用負担
1-1.面会交流の「取り決め」にあたっての問題点
離婚前の別居中の親からの面会交流の請求は可能です。
そのため、父母間でDVやモラハラ、親権の争いが激しく非難し合っているなどの場合では、信頼関係が失われており、同居親から面会交流の協力すら得られないケースがあります。
こうした場合、同居親は面会交流に協力したくないので、面会交流の取り決めについて話し合いすら応じないケースや、面会の日程・場所・方法などの詳細な条件について折り合いがつかないケースなども少なくありません。
1-2.面会交流の「実施時」の問題点
面会交流の日程調整などのやり取りのたびに、父母間でお互いに言い争いや非難し合ったりするケースもあります。
この場合には、面会交流の実施自体が子どもにとってストレスになり、子どもへ悪影響を及ぼす可能性もあります。
また、面会交流を実施する場面においては、相手と顔を合わせたくない、子どもをそのまま連れ去られてしまう不安などの理由から、面会交流を拒否するケースがみられます。
ただ、別居親からの面会交流の請求を無視していると養育費の支払を止められたり、面会交流や親権変更を求める調停や審判、間接強制などを裁判所に起こされるリスクが発生します。
下記のコラムでは、そうした面会交流拒否によるリスクについて解説しています。
関連記事
- 面会交流を拒否するリスクと、拒否された別居親の対処法
子供の福祉を目的とした面会交流の請求は、同居親は原則として拒否することはできません。
別居親からの請求を無視、拒否し続けることのリスクや、別居親として面会交流拒否が続く場合の対処法について解説しています。
2.面会交流をサポートする第三者支援機関
父母間で協力し合って面会交流を行うことが難しい場合には、面会交流の第三者支援機関の利用を検討しましょう。
第三者支援機関とは、面会交流をスムーズに実施できるように、父母の間に入って面会交流を支援・援助してくれる機関です。
自治体やNPO法人などによる支援団体等が存在しています。
支援・援助の内容や料金、利用までの申し込み方法は様々であり、利用を検討する場合には、事前に利用方法を確認するようにしてください。
参照 │ 親子交流支援団体等(面会交流支援団体等)
▽ リンク(法務省)
親子交流支援団体等(面会交流支援団体等)の一覧表について
※ 法務省が推奨するものではなく、全国の支援団体の希望により一覧表を作成しホームページに掲載しているものです。支援活動の内容について保証されてはいません。(利用検討の際には、ご自身で支援内容や条件を確認する必要があります。)
なお、法務省が定める「親子交流支援(面会交流支援)に関する参考指針」にもとづいた、団体の運営全般、支援内容、個人情報の取り扱い、トラブル対応がなされるよう任意での協力を求めています。
2-1.自治体
自治体自身で面会交流の支援を行っている場合や、自治体が面会交流の専門機関に委託して支援を行っている場合があります。
自治体の支援は、費用が無料となっているケースもあります。
2-1-1.自治体直営で実施しているケース
自治体が直営で面会交流支援事業を実施している、兵庫県明石市の事例を紹介します。
2-1-1-1.明石市
費用は交通費や面会の際にかかる施設利用料などの実費以外無料となっています。
もっとも、利用するための条件として、子どもが明石市に住んでいて、年齢は中学三年生までであることなどが必要です。
支援内容としては、交流日程の連絡調整のサポートや、面会当日の子どもの付き添い・受け渡し、面会の場所の提供などを行っています。
また、費用が無料の場合、親の収入が要件となっていることが多いですが、明石市の場合、親の収入制限を設けずに実施しており、利用期間の制限もないことが特徴です。
2-1-2.自治体が団体に委託しているケース
自治体が面会交流の専門機関に委託しているケースもあります。
2-1-2-1.東京都
東京都では、東京都ひとり親家庭支援センター「はあと」及び「はあと多摩」において離婚後の問題について相談等のサポートを行っており、面会交流については、公益社団法人家庭問題情報センター「FPIC(エフピック)」に委託しています。
FPICは実務経験を重ねた家庭裁判所調査官から構成され、信頼性も高く、実務では多く利用されている機関です。
実費を除く費用は無料です。
利用する条件としては、面会する子どもが中学生以下であること、子どもと同居する親が都内に住所を有していることや、親の収入についても一定の基準を満たす必要があります。
支援内容は、付き添い、受け渡し、連絡調整など行っています。
面会は月1回まで、1回の時間は1時間程度、支援開始月から最大1年間(12回)利用できるなど支援期間・回数の制限があります。
2-1-2-2.千葉県
千葉県も、面会交流についてはFPICに委託して支援しています。
利用するための条件や支援内容など東京都と同様で、支援期間・回数の制限もあります。
2-2.NPO法人、公益社団法人、一般社団法人(面会交流支援団体)
自治体以外の民間団体で代表的なものとして、自治体の委託先にもなっているFPICが挙げられ、当事務所でも多く利用しています。
子どもの付き添い型の支援は、月1回で、1回につき3時間以内(初回は1時間程度)、場所は原則としてFPIC相談室内の児童室にて行います。
費用は利用ごとに発生し、2時間までで1回15,000円~20,000円程度、3時間までで20,000円~25,000円程度となっています。
受け渡し型の支援についても月1回までで、初回は付き添い型の支援を行う必要があります。
費用は、1回につき3時間まで10,000円、6時間まで15,000円程度です。
連絡調整の支援は、付き添い支援、受け渡し支援を経た後に、父母間での連絡が難しい場合にのみ利用することができます。
費用は、1回3000円程度です。
その他、短期支援という面会交流の支援を1,2回受けることで、父母間の自力での実施を目指すものもあります。
1回1時間程度で2回を限度とし、付き添い型支援で実施します。
費用は1回につき15,000円~20,000円です。
また、支援期間は1年間ですが、父母ともに希望すれば1年単位で、面接した上で更新することができます。
なお、支援の更新は原則として開始後3年まで(付添い型支援の更新は、小学校3年生まで)となっていますが、子どもの発達状況など相当な理由がある場合には期間を延長することができます。
支援は最長で小学校6年生までです。
3.第三者支援機関のサポート内容
3-1.サポート内容
これまでの説明でも挙げた付き添い型、受け渡し型、連絡調整型の3種類の支援・援助を行っていることが一般的です。
3-1―1.面会交流の付添
面会をしている場に付き添うかたちで、面会を安全かつ安心な状況で実施できるようにサポートするものです。
第三者機関の職員が面会の場に立ち会ってくれるので、面会する親が不適切な行動をとらないか見守ってくれます。
父母の関係が悪く顔を合わせたくない場合、相手と会うことで虐待など危害が加えられる危険がある、子どもの連れ去りの懸念がある場合などに、利用するメリットがあります。
費用の相場は2万円~数万円です。
有料の施設などを利用する場合には、付き添う職員の利用料を負担する必要があります。
付添い型は、受け渡し型、連絡調整型を含んでいる場合が多いので、3つの支援方法の中で一番高額になりやすいです。
3-1-2.子供の受け渡し
子どもを受け渡す際に、父母が直接顔を合わせなくて済むように代わりに受け渡しを行ってくれます。
子供を受け渡すだけなので、面会の場には付き添わない点で付添い型とは異なります。
子どもが付添なしで別居親と過ごせる年齢である場合や、子どもとの面会自体には心配はないが、父母が顔を合わせたくないケースなどに利用するメリットがあります。
費用の相場は、1万円~3万円となっております。
3-1-3.連絡調整
面会交流の日時や場所、方法などを第三者機関が連絡役になって調整してくれるサポートです。
付き添いや子どもの受け渡しなど面会自体は父母間で実施する必要があります。
費用の相場は数千円~1万円となっております。
連絡調整のみサポートを依頼したい場合などに利用のメリットがあります。
3-2.費用の参考
各支援方法の費用相場は以下のとおりです。
-
付き添い型 10,000円~数万円
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受け渡し型 10,000~30,000円
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連絡調整型 数千円~5,000円
各支援方法の費用は、第三者支援機関によってそれぞれ料金が異なりますので事前に確認しておくとよいでしょう。
また、その費用負担についても父母間で事前に決めておく必要があります。
父母間の諸事情により異なる負担割合で合意するケースもありますが、基本的には折半することが多いです。
4.第三者支援機関利用時の注意点
第三者支援機関を利用する場合の注意点について解説します。
4-1.サポートの限界
第三者支援機関は、最終的には支援を卒業し、父母間のみで面会交流を行ってもらうことを目指しており、そのため、支援期間・回数なども制限をしている場合が多いです。
4-1-1.回数
面会交流について月1回までの回数制限をしている場合が多いです。
月1回以上の面会を行う場合には、別途、父母間で合意しておく必要があります。
4-1-2.期間
支援期間は1年間と定めている場合が多いです。
民間の第三者機関の場合は、父母の同意があれば期間の更新も認めています。
第三者支援機関も最終的には支援を卒業してもらうことを目指しているので、父母同士だけで面会交流が行えるように、段階的に父母間で連絡調整を試してみたり、自立した面会交流にシフトしていきましょう。
4-1-3.トラブル対応
第三者支援機関を利用したとしても、暴力や暴言、連れ去りなど相手が身勝手な行動をとるリスクをすべて取り除くことはできません。
仮に、そのような状況になった場合には、即刻、面会交流は中止し、第三者支援機関が入っても解決できないような状況の場合には警察や弁護士に相談しましょう。
5.第三者支援機関利用による面会交流の決め方
第三者支援機関を利用することで、一般的な面会交流の取り決めとは異なる合意を必要とする場合があります。
5-1.面会交流条件で決めておくべきこと
第三者支援機関によっては、面会交流の合意内容を含んだ書面の提出が求められる場合があります。
参考│面会交流の合意内容の例 | |
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面会場所 | 第三者支援機関によっては、支援できる地域・場所が限定されている場合がありますの で、どのような場所で面会を行い、第三者支援機関を利用するのか決めておきましょう。 |
面会の代替手段 | 面会交流は子どもの利益を最も優先して実施されるものなので、学校行事や体調不良の場合には、第三者支援機関を利用した場合でも、面会交流が実施できない場合があります。 中止の場合を見越して、代替手段などをあらかじめ検討しておくことがトラブル回避に有用です。 |
費用負担 | 第三者支援機関を利用するにあたっての費用について、その負担割合を合意する必要があります。 基本的には折半としているケースが一般的です。 |
利用期間 | 第三者支援機関を利用する期間について、あらかじめ合意しておくことで、自分達だけで行う面会の開始時期を明確にすることもできます。 もっとも、実際に第三者支援機関の利用を終了するかの判断は、その第三者支援機関の助言・判断による場合があるので、利用期間の合意はあくまで目安程度の意味合いになるでしょう。 |
5-2.調停手続で利用を決めることもできる
調停などの裁判手続きのなかでも第三者支援機関を利用した面会交流の取り決めをすることも可能です。
条件に合意した内容は、調停調書や和解調書などに記載されることになります。
6.まとめ
父母当事者間で面会交流を実施することが難しい場合には、第三者支援機関を利用することを検討しましょう。
面会実施の都度、費用が発生するというデメリットはありますが、(元)夫婦間で直接顔を会わせることなく、子供のために面会交流を実施できることは大きなメリットともいえます。
利用する場合には、支援団体の支援内容、費用、利用条件や利用ルール、利用の流れなどを確認・検討のうえ、信頼できる第三者支援機関を選んで申込みをされると良いと思います。
6-1.当事務所での利用例
当法律事務所でも、面会交流トラブルにおけるサポートをおこなっています。
面会交流の交渉、調停手続きから面会が円滑におこなわれるための活動を実施しています。
当事務所の事例でも、同居中の不仲が原因で面会交流をさせたくないという母親に対し、第三者支援機関の存在を説明した上で、同機関を利用して父親との面会交流を実現できたケースは多くあります。
父母間だけでの面会に不安を感じて面会交流に消極的になっている場合には、第三者支援機関の利用も検討してみてください。
(元)夫婦間で面会交流について話し合いができない、進まないといった悩みは弁護士法人DREAMまでご相談ください。
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