特別受益を考慮し、公平な相続を成立させた事例

特別受益を考慮し、公平な相続を成立させた事例

性別:女性
年齢:40代
職業:会社員
結婚歴:なし
子供:なし

目次

事案内容

事案の概要

父親が死亡し、長男A、次男B、長女C、次女Dが相続人となりました。遺産は父が末娘のDと暮らしていた自宅と、収益物件であるマンションが1棟、現金が3000万円ほどでした。

決着がつくまで、マンションの管理と賃料等の経理はとりあえず、生前から父より月額5万円のバイト料をもらって、担当していた末娘である次女Dが継続することになりました。

長男Aと次男Bは、自宅をDがとり、残りの3人はマンションを区分所有にして、3分割し、でこぼこは3000万円の現金で調整しようと言ってきました。しかし、長男Aと、次男Bは父親からすでに自宅を買ってもらっており、この点が特別受益になるため、何ももらっていない自分たちは不公平であるとしてC,Dが相談に見えました。

調査してわかったこと

父は、生前、長男Aに対しては、5000万円でAが新築した自宅のうち3000万円を援助していました。これは送金履歴で明らかにできました。次男Bに至っては、動物病院(自宅を兼ねる)を開業した資金7000万円のうち5000万円を援助し、税務署対策としてしばらくは返済を受けていたようですが(月額20万円の2年間)、その後うやむやになっており、それどころか、資金不足になると、100万円、200万円と与え、その総額は1000万円を超えていたようです。しかし、これは手渡しあったため、送金履歴はありませんでした。

長男と次男は、妹たちに対しては、「自分たちは家をもらったが、妹たちは豪華な花嫁道具と豪華な結婚式を挙げてもらっているから平等だ」と主張していましたが、花嫁道具は別に常識の範囲をでず、結婚式で言えば、男性二人は帝国ホテルで、親が設定しており、嫁いだ立場にある娘たちとは桁が違うこともわかり、この兄たちの主張は実態がないことも判明しました。

ただちに遺産分割調停を申し立てましたが、特別受益については、長男Aについては、送金履歴から3000万円が立証できたものの、次男Bについては、動物病院開業後、ちょこちょこと援助していたとする1000万円は手渡しであったため立証はできませんでした。結局、開業資金として、きちんと返済計画まで出させて2年間500万円程度を返していた5000万円が立証の限界であり、特別受益額は返済額を引いた4500万円と認定されました。

しかし、問題は分割方法でした。自宅の価値は3000万円くらいであり、これを末娘が取ることは皆納得したものの、法定相続分から、特別受益を調整して分けようにも、中核となる財産は価格が1億5000万円程度とされる一棟の建物であるマンションのため、これを誰かが取得して、残りを現金3000万円で調整するということは不可能でした。しかし、そうであれば、本来ならばマンションを区分所有にして持ち合うことが可能ですが、この特別受益の立証過程で、CDは結束しているものの、そのほかの男性陣対女性陣、あるいは男性同士も仲たがいしてしまい、区分所有で持ち合うなど御免こうむるとして、とても合意できる状況にありませんでした。またマンションを売却するにしても、意見が違いすぎ、誰かがリーダーシップをとらないと、とても、何年経っても売却の合意まで至らない可能性がありました。

結局、マンションは諸費を引いて1億7000万円で売却でき、遺産総額は

  • 自宅3000万円
  • マンション売却益1億7000万円
  • 現金3000万円
  • 長男Aへの援助3000万円
  • 次男Bへの援助4500万円

の、合計3億500万円となりました。

結果

特別受益や、自宅を次女Dが取得することなどを調整し、下記の分割合意が成立できました。

  • 長男A 現金4625万円(特別受益3000万円)
  • 次男B 現金3125万円(特別受益4500万円)
  • 長女C 現金7625万円
  • 次女D 自宅ならびに 現金4625万円

解決期間

約4ヶ月

解決ポイント

  • 送金履歴が残っていたこと
  • 裁判所に弁護士を紹介してもらったこと

弁護士からのアドバイス

特別受益は、年月が経ったり、税務署対策で形だけ弁済をしていたりすると、実態を把握するのが難しくなります。本件は受益額が高額なため、現金での手渡しができなかったようで、送金履歴が残っていた事から大半の部分に付いては、立証ができました。

但し、男性兄弟から出された「豪華な花嫁道具と結婚式」については、女性兄弟はかんかんに怒っており、たまたま式場の実際や、家具の状況なども呈示することはできましたが、この陳腐な立証活動ですっかり腹を立ててしまい、兄弟の仲は決定的に断絶してしまいました。これが後述の不動産資産売却に影響を与えたのです。

そこで、大変イレギュラーではありますが、裁判所に弁護士を紹介してもらい(法的にこのような制度はありませんから、全くの事実上の紹介です)。この弁護士に販売についてのリーダーシップを取ってもらい、それに皆が従う、という合意を代理人で苦労して取り付ける事ができました。これが実施できたので、売却益から、特別受益や、自宅不動産の取得を念頭においた、でこぼこの処理が可能となり、法定相続分での分割が可能となったわけです。