相続人の一人が、被相続人の預貯金を生前から不当に引き出していた事案

相続人の一人が、被相続人の預貯金を生前から不当に引き出していた事案

性別:女性
年齢:40代
職業:会社員
結婚歴:10年
子供:1人

目次

事案内容

事案の概要

母親が死亡し、2人の娘(姉のAと妹のB)が相続人となった事例(依頼者は妹のB)です。母親は、亡くなる5年ほど前から、元々家庭のなかったAと2人で暮らすようになっていました。父親が10年ほど前に相当程度の遺産を残して亡くなりましたので、母親は現金で1億程度、そのほかに自宅と2つの収益物件(マンション)を持っていました。Bは、自宅は母親とAが住んでいたので、Aがそのまま住み続ければ良いと思い、Aが相続する事に異存はありません。なので、他に2つある物件のうち1つを分けてもらい、あとは現金を平等に分けてくれればいいと思っていました。ところが、協議に入ると、Aから現金は1000万円程度しかないと言われて驚き、相談に見えました。

結果

  • 不動産については、自宅はAが相続、2つある物件の内、大きいほうをBが、小さい方をAが取得してバランスを計りました。
  • 現金については、現金1億のうち、1000万円は、母親の為に使ったと見なし、残9000万円のうち、1000万円を母を看取ってくれたAが取得し、残り8000万円を2分割して、結局6000:4000という分け方にする事で合意ができました。

解決期間

約3年

解決ポイント

元々の母親の預貯金の所在をBが知っていたこと

母親の現金管理の能力の欠如を立証できたこと

Bに譲歩の意思があったこと

弁護士からのアドバイス

同居していたのは姉Aですが、母親が危険を感じてBに書き付けを渡していたことから、預貯金の場所を明らかにできました。ただし、この書き付けが無かった場合でも、父親の遺産分割の際の、父親からの遺産が送金された母名義の送金先口座等を調べる事はできましたので、ある程度の探索は可能でした。いずれにしても、「遺産はもっとあったはず」だけでは、先に進みませんから、初動の調査で、どこまで情報が集められるかが勝負となります。

また、訪問看護ステーションへの照会により、亡くなる2年前に既に要介護4という状況にあったことを立証できました。要介護4というのは、ほとんど意思能力はありません。このような状態で、毎日50万円のお金を引き出して何にしようとするのか、そのような、手配ができる状況にないことは明らかでした。しかも、要介護程度が高いため、わずかなお金で介護サービスが利用できる事から、ほとんどお金はかかりません。2年で1億近いお金を消費する必要性はないわけです。母親自身が引き出す能力もなければ、必要性も無いことが明らかであったことが事案の行方を決めました。

最後に、Aの金銭の引き出し方はいかにも不当ですが、それでもBとしては、正直にAが認めてくれれば、もともと母を看取ってくれたAに対して譲歩する意思を持っていました。兄弟は他人の始まりともいい、遺産分割の争いをきっかけに断絶してしまうことも少なくありませんが、このような譲歩の気持ちをBがもっていたことを調停委員会も注目し、必死でAを説得してくれました。不正を糾弾するところは厳しく糾弾すべきですが、譲歩するところは譲歩するという、柔軟な対応を図ることが早期解決には必要です。